IT社畜犬くわっちょのはてな

青森の片隅で働く、フルスタックエンジニアに憧れる器用貧乏なIT社畜犬の遠吠え

ソシャゲという点からみた艦これの位置付け

ディズニー・ツムツムから見たソーシャルゲーム/スマホゲームの問題点

こちらの記事について

艦これユーザーの視点から何か意見はないかとリクエストされたのでちょっと書いてみます。 といっても、犬はソシャゲの開発や運営には携わったことないのと、艦これ以外のソシャゲほとんどやったことない(ただしアケマスは昔相当やりこんでた。後述)ので 完全に犬の主観であり、感想となりますこと先にご容赦ねがいます。

ちなみにソシャゲの流れとかについては元記事の方が詳しいので詳しくは割愛。必要なところは元記事より引用していきます。

前提:そもそも艦これのルールとは


まず艦これとは、第二次世界大戦時の旧大日本帝国海軍 + 他複数国の軍艦をいわゆる萌え擬人化した「艦娘」をゲーム内で集め、育て、敵である深海棲艦を倒していくというのが基本的な流れです。 ゲーム自体はDMM.comのアカウント + DMMオンラインゲームのアカウントがあれば基本的に無料でプレイできます。 ※ただし、DMMオンラインゲーム自体が18歳未満は利用不可なので実質18歳以上という年齢制限あり ⇒ DMMオンラインゲーム利用規約

ちなみに艦これは、この記事を書いている2015/09/19時点では無抽選常時新規着任開放してますが、数か月前までは抽選制でした。 なので新規プレイは今であればできるはずです。(将来的に抽選制に戻る可能性はあり)

でもって着任した後の流れとしては次のようになります。

  • 初期艦を「吹雪」「叢雲」「」「」「五月雨」の中から一人選ぶ
  • 初期艦以外の艦娘はゲーム内で「建造」するか「出撃」後のドロップで入手する
  • ゲーム内でプレイヤーは「燃料」「弾薬」「鋼材」「ボーキサイト」の4つの資材を持っており、これを消費することで出撃や建造、ダメージを受けた艦娘の入渠(HP回復に相当。ただし時間が必要。後述)を行う。
  • 出撃した艦娘には経験値が入り、これが一定量たまるとレベルアップし、能力が上昇する。
  • 出撃 + 建造 orドロップで艦娘を集め、艦隊を編成して深海棲艦を倒していく。
  • ゲーム内には複数の海域があり、各海域のボスを倒していく事で次の海域が解放される。
  • 海域毎にドロップできる艦娘が変わる。後半海域の方がよりレアな艦娘が登場するため全部集めようと思ったら後半までいく必要あり。
  • 艦娘を轟沈(HPが0の状態)させてしまうと二度とその艦娘は戻らない(建造やドロップで入手できる場合もある)。

というところでしょうか。 空母や戦艦といった艦種の特徴や、その他詳しいルールとか各種パラメータの説明は攻略wikiの方が詳しいので割愛します。

艦これの楽しさはどこにあるか


これ自体は人それぞれだと思います。

  • いわゆるキャラ萌え。初雪は俺の嫁
  • 艦これは史実の艦の情報を知っているとニヤリとするようなネタがふんだんに盛り込まれているので、ミリタリー的な意味での萌え。引きこもりキャラなのに史実では奮闘しまくりな初雪は俺の嫁
  • 公式に「兵站ゲーム」と言われるくらいに兵站の重要な戦術シミュレーションゲームという側面(ただしプレイヤーにできるのは出撃前の装備の選択と誰を出撃させるかという選択だけ。戦闘自体は基本見てるだけ)

艦娘は2015/09/19現在164人(※)が実装されており、1人1人が見事にキャラも個性も異なるので、そのあたりが魅力の大きさたるものかと思います。 ※種類になるともっと多いです。これは艦種が変わったり名前が変わる艦娘も1人でカウントした値

しかし、艦これには他ソシャゲとは大きく異なる特徴が3つあります。 * 他ソシャゲで一般的なガチャのシステムがない * 完全無課金でもほとんどの艦娘が手に入る ※建造や通常海域でのドロップが未実装の艦娘は約10人ほど存在する * リアルマネーをいくらつぎ込んでも、目当ての艦娘に出会える保証はない。運要素が非常に強い

犬的には、これは時間さえあればだれでも確実に勝てることが保証されているゲームだという解釈です。 そして犬的には、ここが艦これの一番の魅力だと思ってます。

時間さえあれば誰でも強くなれるシステム


通常のソシャゲは強いカードやキャラというのはリアルマネーで購入できる何等かのアイテムを用いていわゆるガチャを回して手に入れるのが一般的です。 その代わり、例えば10回以上回したら確実にレアなカードが入ってます、といったように確実に強いカードを手に入れる保証があります。 逆にリアルマネーがないといくら頑張っても限界があります。強くなりたいなら如何にリアルマネーをつぎ込むかがカギとなります。 逆に運営側としては、それをどのように調整、配分するかでそのゲームの特徴を作っていきます。 主観ですがミリマスやデレマスはその傾向が強いように思います。

これに対し艦これは前述のようにこのガチャという仕組みはありません。 艦これでも目当ての艦娘を出すための仕組みとして建造があるのですが、この建造にはゲーム内の資源を消費する必要があります。 しかし、この資源、実は『時間と共に一定量まで回復する』仕組みになっています。 その最大値も出撃し敵を倒せば倒す程増えていく仕組みになっています。 なので、時間さえあれば建造は確実にできるし、いわゆるレシピを知っていればレアな艦娘や強い艦娘が手に入ることになります。 ゲーム内のアイテムを消費してキャラクターを出すという仕組みはガチャとよく似てはいますが、艦これの場合は課金が必要なことを前提としていない点で違いがあります。 建造に必要なアイテムや資材はゲーム内の任務をこなしていくことでたまっていきますし、出撃ドロップも資材さえあれば狙えます。

繰り返しになりますが、この資材が時間があれば課金しなくても確実に手に入る事が艦これの特徴です。 なので艦これはこの資材をどのように計画的に使い、自らの艦隊を充実させていくかという点を非常に考えるゲームになっています。

ただこの建造にしても、出撃ドロップにしても、『目当ての艦娘が手に入る保証はどこにもない』のです。 レアかつ強い艦の代表である雪風島風はドロップ、建造ともに可能ですが、でない時はいくら資材を投入してもでませんし、いくら出撃してもでません。 逆にどちらも1回で出る人もいます。 艦これは目当ての艦娘が「確実に出る」保証はどこにもないのです。 しかし「頑張ればいつかは無課金でも出る」ことは保証されてます。 なのでプレイヤーたちは時間で回復する資源をうまくやりくりしながら誰を手に入れるか頭を悩ませることになるのです。

他のソシャゲは「確実に自分を強くするために」あるいは「確実にクリアできるようにするために」リアルマネーを必要とします。 逆にリアルマネーがないと「どんなに頑張っても強くなれない」システムでもあります。

これに対し艦これはリアルマネーがあっても確実に自分が強くなれるシステムではありません。上記の通り、運要素が強いからです。 ではこの運要素を乗り越え目当ての艦娘を手に入れ、敵海域を突破するためにはどうすればいいか? 答えは単純。「他のソシャゲ以上に何度も試行する」しかないのです。

犬的にはこの「他のソシャゲ以上に何度も試行する」ことをプレイヤーに自然に要求する仕組みが出来上がっていることが艦これの特徴であり、強みだと思っています。 そして、試行した分だけ無課金でも確実に強くなれることが保証されているのです。 また、艦これでは他プレイヤーと競うという概念があまりなく、戦果を競うという側面はありますが、戦果報酬で得られるものも所謂先行実装された装備であり、将来的には他の手段で手に入る可能性があるものなので無理に他プレイヤーと競う必要もないのです。

そして、この「他のソシャゲ以上に何度も試行する」システム自体が艦これにおける課金の重要性を生み出していることになります。 艦これ内において何度も試行するという事は、ゲーム内の資材を使い、建造し、出撃し、ダメージを受けたら入渠させ、それを繰り返して艦娘を育て次の海域に挑む。この繰り返しです。 艦これにおける課金はこれを助けるために存在します。資材をためる時間、建造にかかる時間、ダメージを受けた艦娘を回復させる時間、これをほぼ0にするためのアイテムを買うためにリアルマネーが必要になってきます。

艦これは時間をお金で買うシステムが強調されている


艦これは資材を手に入れる為にも、新たな艦娘を手に入れるためにも、とにかく時間を必要とします。 この時間というのはリアルに待てばいいのですが、忙しい現代人にはなかなかそれができません。 特にイベントが始まった場合は限定の艦娘だったり装備だったりを手に入れるためにいつも以上に試行回数が必要になります。

この試行回数を増やすためには資材が必要になりますし、入渠した艦娘を一瞬で回復させるための高速修復材(いわゆるバケツ)が必要になります。 この資材もバケツも課金で手に入れることができます。いずれも時間さえあれば手に入る手段はあるのですが、それよりも時間を惜しむ場合はリアルマネーを使う事になります。

また入渠のためのドックも、最初は2つしかありません。課金することで4つまで増やせます。 ドックを増やす事でトータルの修理時間を減らし、素早く次の海域へと出撃していくことができるようになります。 その為にもやはりリアルマネーが必要になります。

建造にも大和や武蔵といった最強クラスの艦娘は「大型艦建造」というより大量に資材を消費する仕組みでしか手に入らないというケースがあります。 この大型艦建造も最後は試行回数です。これに必要になる資材をとにかく1秒でも早く欲しいとなれば、リアルマネーに手を出す必要があります。 ※といっても大和や武蔵を出すために必要な金額は軽く10万は超えるでしょうが...

ただし、これはあくまでも時間が惜しければの話です。 艦これは時間さえあれば必要なアイテムはゲーム内で必ず手に入ります。なので無理に課金する必要はないのです。 逆に無理に課金しなければならない状況になったということは、それだけ時間が惜しい事を意味します。 艦これにおいてリアルマネーをかけることは現実の時間をお金で買っているのです。

リアルマネーによらず強くなれる仕組みの本質


最近のソシャゲはどちらかというとリアルマネーを払ったプレイヤーが強く、そうでないプレイヤーは弱いという立場になりがちです。 これに対し、艦これはソシャゲのよい部分は残しつつ、旧来のゲームにあった「時間をかければ誰でも確実に強くなれる」という面が強調されていると思います。 この時間もリアルマネーでどうにかできる部分はありますが、必ずしもそれを要求するバランスにはなっていないことも伸びた理由でしょう。

ソーシャルゲーム自体の構造が本当にこれでいいのかどうかの考察とかは元記事の方が詳しくやっている上に長いのでここでは割愛します。 ちなみに、元記事で指摘されているようなソシャゲの構造的な問題点についてははっきりいって艦これにもほぼ同様の事が言えます。 ただ "しかも、その提供側は世界を支配している。トッププレイヤーが何百時間を費やし、ついに獲得した技芸を無意味なものにしてしまうのも容易い。「さぁ、圧倒的な存在などなくなりました、まだまだチャンスがあります」というわけだ。"という他のソシャゲで多々見られるこの展開は艦これにはあまり当てはまりません。 そもそも艦これは先行ユーザーが後発参入者よりも絶対的に有利になる状況はほぼありません。 せいぜい未だ通常海域に実装されてない装備や艦娘を先に手に入れられるということくらいで、これはゲーム自体のバランスを絶対的に崩すものではありません。 ゲーム的な意味で強い艦娘の大半は後発参入者にも確実に手に入るようになっています(例外としては秋月、照月、プリンツ・オイゲンくらい)。 他人と争うメリットがあまり大きくないシステムを採用している艦これでは、後発参入者にとっても優しいゲーム体系だといえます。 "基本的に現在のトッププレイヤーを基準してルールが変更されていく。ほとんどの場合、新規参入者は歯牙にもかけられず、その競争には加われない、そもそも楽しめないようにしてしまう。"というのが主流なソシャゲ界隈においてはその競争にある程度のレベルまで達すれば後発参入者でも容易に参加できる艦これは易しい方だと思います。

ただし"クリアしてしまえば、やめてしまう可能性が高いし、満たされてしまえばそれ以上支払わない。だから、次々と目標を提示する。「ミッションがありますよ!」「これをクリアしたらこれがもらえますよ!」そうして、各々のプレイヤーが思い描いていたゴールや楽しみ方を剥奪し、遠くにゴールを設定してそれを目指せと煽る。"という点があるのは事実です。 イベント海域などはいい例ですね。 ただそのゴールが「なければないで構わない」「また次がある」と言える空気があるのが艦これのいいところではあると思います。 ※ただ前述の秋月型姉妹やプリンツ・オイゲンという大きな例外もあるので微妙なとこですが……

まとめると

  • 後発参入者にもチャンス(無実化されたものではない。これ重要)がある
  • 時間と本人の努力次第で強くなれるという旧来のゲームのいい部分を部分的に引き継いでいる
  • 上記の時間を補うための仕組みは別途用意されている。これをリアルマネー形式にすることで運営側にとっての収益モデルとなりえる。

という、過度に課金主義にならず、それでいてユーザーにとって確実に楽しめる形式を産み出し、運営側にとっても確実な収益を生み出せるモデルケースが艦これなのだと思います。

余談:本質を忘れた点がないわけではない


ただ最近行われたイベントでは上記の本質を見失いつつある事態が起きていたことも事実です。

  • イベントのラスボス撃破に必要な非常にわかりにくいギミックの導入
  • イベント後半海域の報酬艦が照月とバランスブレイカー的な艦娘の為、後発参入者にとっての不利につながる。
    • 一応摩耶改二や五十鈴改二、初霜改二という代替手段はあるものの……
  • 前イベントの報酬艦である秋津洲がいる前提の海域の増加やイベント海域の実装

たしかにソシャゲそのものが運営側に大きな裁量があるのは事実ですが、後発参入者にもチャンスがあるのが艦これの魅力だと思っているので、この点を忘れずにいい意味で平等に機会は与えられているという事は守ってほしいものです。 まあこの「機会は平等」というのがギャンブル的要素を含んでいるのも事実かもしれませんが……